オフィスにいる3人で打ち合わせをするために、会議室を探す。
選べる中でいちばん小さい部屋を予約しても、定員は8名。
大は小を兼ねる……そう妥協して予約したこと、ありませんか?
大規模オフィスでの運用を分析したAcallの調査によると、会議室が使われている時間を通してみると、定員分の席のうち実際に人が座っていた割合は約3割でした。
つまり、席の約7割は空いていたことになります。
部屋は使われている。けれど、多くの席は空いたまま。
データを追うと、この一見ちぐはぐな状態の背景に、会議人数と会議室サイズのあいだのズレが見えてきました。
1|会議室サイズの大きな段差
Acallが分析した大規模オフィスの3万件を超える会議データを見ると、1回に集まる人数は平均3.17名でした。さらに興味深いのは、部屋が大きくなってもその人数がほとんど変わらないという、意外にコンパクトな会議の実態です。
- 定員8名:平均3.02名
- 定員10名:平均3.19名
- 定員12名:平均3.16名
これらの会議室に、実際に集まっているのは平均すると3人前後でした。部屋が大きくなるほど利用人数も増えるという関係も、ほぼ見られません。
では、その3人前後の会議を受け止める部屋は、どのくらいあったのでしょうか。
今回分析したオフィスでは、会議に使える空間の約4割が1名用の個室ブース、約6割が8名以上の会議室。そのあいだにあたる2〜6名向けの部屋はありませんでした。
実際の利用は3人前後に集まっている一方で、部屋の構成は1名用と8名以上に分かれ、その間のサイズが抜けていました。ここに、会議人数と部屋サイズの大きな「段差」があったのです。
ただ、少人数で大きな部屋を使う理由は一つではありません。来客対応など人数以上の広さをあえて選ぶ場合もあれば、ちょうどいい部屋が空いておらず大きな部屋を選ぶ場合もあります。
大切なのは各サイズの部屋が「あるか」ではなく、よく使われる人数に合う部屋を、必要なときに選べるかどうか。会議人数と部屋の構成を重ねることで、部屋数だけでは見えないサイズの偏りが見えてきます。

2|その空席は「ゆとり」か、ミスマッチか
空席があること自体は、問題ではありません。
3人で10名用の会議室を使っていても、資料を広げたりオンライン参加者を交えたりと、人数以上の広さが役立つ場面もあります。少し広めの部屋だからこそ快適に話せることもあるでしょう。
ですが、こうした余白が日常的に生まれているとしたら、少し見方が変わります。
会議室は多くの人が入れ替わって使う場所です。一つの会議にとっては快適な広さでも、それが重なればオフィス全体では選べる部屋を少なくしている可能性があります。
今回のデータでも、定員に対して実際に使われていた席の割合は、
- 8名用:37.8%
- 10名用:31.9%
- 12名用:26.3%
と、部屋が大きくなるほど低くなっていました。全体でも約30.6%で、1回の会議につき平均7.2席が空いていた計算です。
だからといって、空席の多さだけで「無駄」と決めることはできません。前章で見たように、よく使われる人数に合う部屋を十分に選べなければ、少人数の会議が大きな部屋へ流れている可能性もあるからです。
個々の会議にとっての快適さとオフィス全体の使いやすさは、必ずしも一致しません。
空席が多いとき、その数だけを見るのではなく、なぜその空席が生まれているのかを見る。そこに、会議室のサイズ構成を考え直す手がかりがあります。

3|会議室の「ちょうどいい」は、平均では決められない
ここまでを見ると、「平均3人なら、3〜4名用の会議室を増やせばいい」と答えを出したくなります。ですが、平均はそのまま「多くの人に合う大きさ」を意味するわけではありません。
そのことを考えるうえで、興味深い例があります。
1950年代、米空軍の4,000人を超える飛行要員を対象に、研究者のGilbert S. Danielsが10の身体寸法すべてで「平均的な範囲」に入る人を調べたところ、その結果は0人でした【1】。
会議室にも似たことが言えます。平均3人という数字からはふだんの使われ方の傾向は分かっても、「3人に合わせればいい」という答えまでは導けないのです。
実際、今回のデータでは利用人数を確認できた会議室の6割以上で定員を超える利用も見られました。普段は少人数で使われていても、ときには大きく人数が増える。こうした使われ方は平均だけを見ていると見落としてしまいます。
平均よりも、需要の幅を見る
日常の3〜4名に合わせて部屋を小さくすれば、大人数が集まる場面の受け皿がなくなります。反対に、そのために大きな部屋を多く残せば普段の少人数利用とのズレが続きます。
見るべきなのは平均の人数だけではありません。普段は何人くらいで使われ、ときにはどこまで人数が増えるのか。そうした使われ方の全体を捉えることが大切です。
会議人数に合う選択肢をつくる
そこで考えたいのが、会議室をひとつの標準サイズに寄せるのではなく、実際の使われ方に合わせて必要なサイズを段階的に揃えることです。
- 3〜4名の利用が多いなら、その人数で選べる小規模な部屋を十分に用意する
- 大人数が集まる頻度も見ながら、中・大会議室を残す
- 人数変動が大きいなら、分割・結合できる会議室など、サイズを変えられる空間も取り入れる
ポイントは平均人数に合う部屋をつくることではなく、少人数から大人数まで実際の使われ方に応じて選べる状態をつくることです。
データから、部屋の構成を組み替える
実際に、利用データから会議室の構成を見直した例もあります。
ワークプレイス分析を手がけるFreespaceがグローバル企業を調査したところ、大きな会議室でも、実際には定員を大きく下回る人数で使われている部屋がありました。
そこで、重要な社内外の会議などに使われる大会議室は残しながら、利用人数の少なかった2室を5つの小規模な会議室へ組み替える案を作成。さらに混雑時を想定して新しいレイアウトを検証したところ、会議室や集中スペースを確保したまま、同じフロアを従来より67人多く利用できる結果となりました。収容力にすると26.5%の向上です【2】。
注目したいのは、大きな部屋を一律に減らしたのではないことです。残すべき役割は残し、実際の利用人数と合っていない部分だけを組み替える。データを見ることで、「足りないから増やす」以外の選択肢も見えてきます。

4|データに映らない「選べなかった」を拾う
ここまで見てきたのは、実際に選ばれ、使われた部屋のデータです。
一方で、ちょうどいい部屋がなく大きな部屋を選んだ、予約を諦めて時間をずらした、オンラインに切り替えた——。こうした行動は、利用実績だけでは捉えきれません。
「選ばれた場所」が、必ずしも「使いたかった場所」とは限らない。このことは、海外の調査からも見えてきます。Genslerが15カ国・約17,000人を対象に行った2025年の調査では、44%が快適さやレイアウトよりも、「そのとき使える場所であること」を優先してオフィス内の働く場所を選んでいました【3】。
会議室の構成を見直すなら、使われた部屋だけでなく「ちょうどいい部屋がなかったときどうしたか」という視点が手がかりになります。
3つの手がかりを重ねる
手がかりになるのは、次の3つです。
- 予約時の予定人数と、選ばれた部屋の定員
少人数で大きな部屋を予約するケースが、どの人数帯で多いかを見る - 実際の利用人数
予約時の想定と、当日の使われ方とのズレを確認する - ちょうどいい部屋を選べなかったときの行動
短いアンケートやヒアリングから、時間をずらした、オンラインに切り替えた、といった動きを拾う
予約データと実際の利用人数だけでは「なぜその部屋が選ばれたのか」まではわかりません。そこに利用者の行動を重ねることで、数字だけでは見えなかったニーズを捉えやすくなります。
大きく変える前に、小さく試す
とはいえ、ここまで見ても「4名用をあと何室」と正解が出るわけではありません。まずは改装や増設の前に、小さく試してみる方法があります。
たとえば、利用の少ない大きな部屋を可動家具で区切り、一定期間だけ少人数向けのスペースとして運用する。その前後で予約の入り方や利用人数がどう変わるかを見れば、「この人数帯の部屋が足りないのでは」という仮説を確かめられます。
まず使われ方を知り、見えないニーズを拾い、試して確かめる。そうした積み重ねから、自社に合うサイズ構成が少しずつ見えてきます。
会議室のデータは、「どれだけ使われたか」を測るだけではありません。その空間が今の働き方に合っているかを考え直す手がかりにもなるのです。
まとめ:会議室の「数」を数える前に
会議室のサイズは一度決めたら終わりではありません。日々の使われ方そのものが、次の見直しの手がかりになります。
今回紹介したのはあくまで一つの傾向ですが、予約データに実際の利用人数を重ねてみれば、間取り図だけでは見えなかった、日々の働き方の輪郭が浮かび上がってきます。
その変化を読み取り、いま必要な空間へ少しずつ整えていく。
会議室は、使われ始めてからも育てていくことができるのです。
参照資料
【1】Harvard大学教育大学院「Beyond Average」
https://www.gse.harvard.edu/ideas/ed-magazine/15/08/beyond-average
【2】Freespace, “Driving Workplace Intelligence: A Global Professional Services APAC Journey”
https://www.afreespace.com/case-studies/driving-workplace-intelligence-a-global-professional-services-apac-journey/
【3】Gensler「Agency Is the New Workplace Amenity」
https://www.gensler.com/blog/agency-is-the-new-workplace-amenity


