時代の超最先端を先導する木製オフィスビル。目指したのは「エンジニアが誇りを持って働ける場所」 

自動車や航空機、宇宙、FA、ロボットなど、さまざまな分野で活躍する総合エンジニアリング企業「タマディック」(本社:東京都新宿区)。2021年11月に誕生したタマディック名古屋ビルは木材を使用した斬新なビルで、世界的な建築家・坂 茂氏(ばん しげる)が手がけたこと、またビル内に社員が自由に使えるサウナが設置されたことで大きく話題を呼びました。 

しかし、このビルにはそれ以外にも快適に働ける仕掛けが随所に施されています。固定観念を覆す新時代のオフィスについて、同社の代表取締役社長・森實敏彦さんに伺いました。 

2021年11月に誕生し、話題を呼んだタマディック名古屋ビル 

目指したのは「エンジニアが誇りを持って働ける場所」

 株式会社タマディック 代表取締役社長・森實 敏彦さん


―外観、内観ともに木材が随所に使用されている珍しいビルで驚きました。ふんわりと木の香りが漂い、とても心地良いオフィスですね。

ありがとうございます。このビルは建築家の坂先生に作っていただいた日本初の木質免震構造オフィスビルです。このエリアは防火地域のため、耐火建築物しか認められません。そこで、CLT板とコンクリートを組み合わせた構造を用いることで、耐火基準をクリアしつつ木のあたたかな執務空間と、しなやかさと頑丈な構造性能を持つ建築物を実現しました。 

―世界初の建築技法を使っていると聞きましたが、どんな技術なのでしょうか? 

CLT板を組み合わせてロの字型の断面をつくり、それを型枠にしてコンクリートを打設した柱が用いられています。日本は他の諸外国・先進国にない、法規制(耐火基準)があるために木造建築が制限されています。CLT板が型枠、そしてコンクリートの強度を増すための補強、そして従来は型枠を剥がしてさらにその上に仕上げをしますが、CLT板を使うことでその手間も省けており、二重にも三重にも意味を持たせています。日本独自の規制があるからこそ生まれた、日本、そして世界初の新しい試みになるのだそうです。 

―オフィスならではの堅苦しい雰囲気がなく、木に囲まれているのでリラックスして仕事ができそうですね。

はい。私自身、色々なところに足を運んでみても、木がある環境のほうが明らかに集中できていると感じていたし、「オフィスは堅い雰囲気でないといけない!」「木製のオフィスビルはダメ」というルールはないので、人にも環境にもやさしいものにしたかった。 

それに木材を使うことで、木が室内環境を整えてくれます。温度変化が緩やかになり、湿気が多い時は木が湿気を吸ってくれて、乾燥しているときには湿気を吐き出す調湿作用もあるため、湿度によるストレスも軽減されているのではないかと思います。 

また、空調を天井ではなく床から染み出すエアコンを設置していることも、快適なオフィス空間を実現させる一因。床から冷気や暖気が染み出すエアコンなので、空調の風が直接当たらない。実はこのエアコンのほうが天井に設置するタイプに比べて環境への負荷が低いし、働く人にも負荷が低いんだそうです。 

 人にも環境にも優しい木材が活用されたオフィス 

―世界初の建築技法や、最新の設備が採用されていて、オフィスとしてはかなりのコストがかかっているように感じます。なぜオフィスに投資することに価値を見出し、実際にコミットできるのでしょうか? 

確かにすごいビルを建てることができましたが、正直、経営効率の観点から考えると、その時々の状況に応じたオフィスを借りて、状況が変われば移転するというのが一番効率的。 

でも私自身、オーナー社長として約20年会社を経営して感じているのが、会社は人が資本だということ。それがオフィスへ投資する理由として大きいです。製造業においてエンジニアはかけがえのない存在です。設計や開発をメインに行う弊社ではなおさらです。だからこそ、彼らが働く環境は古くからあるようなオフィスではなく、「エンジニアが誇りを持って働ける場所にしてほしい」と坂先生にオーダーしました。最新の技術が使われていて、健康的に働ける場所。エンジニアたちが「ここで働きたい」「ここで新しい技術を生み出したい」と思える場所を目指しました。 

そして、会社にとっても社員へ還元することが、良い企業として長く続いていくことにつながる。社員に優しいと言われたらそうかもしれませんが、経営的な視点から見ると合理的な判断でもあると考えています。人材がさらに貴重になるこれからの時代、弊社のようなオフィスも増えていくのではないでしょうか。 

コミュニケーションや新しい技術へ繋がるオフィス内サウナ

在日フィンランド大使からのサーティフィケートが飾られた『LUOVA SAUNA』のエントランス

―オフィス内にサウナがあることでも話題になりましたが、なぜサウナを設置したのでしょうか? 

サウナは社員の健康意識の促進と社員同士の交流などを目的としています。 

また、弊社のサウナは「LUOVA SAUNA」という名前なのですが、「LUOVA」はフィンランド語でクリエイティブという意味の言葉です。ものづくりをする会社だからこそ、サウナがそういったクリエイティブな場になることを願ってその名前をつけました。 

―サウナは無言で入るもの、長時間入っていられない、疲れるなどのイメージがありますが、サウナでコミュニケーションや新しいアイデアの構築は促進できるのでしょうか? 

弊社のサウナはフィンランド式のサウナを採用しているのですが、フィンランドのサウナって息苦しくないので、何分でも入っていられるんです。むしろサウナに入っていることが心地良いと感じるほど。 

というのも、フィンランド式のサウナは温度が高くても、室内を締め切らずに空気を通ることを大切にしているので、息苦しくなく、人と会話することが可能。15分くらいなら、会話しながら平気で入っていられます。 

そしてサウナで温まった体を冷やすための水風呂も、冷めたすぎないたっぷりの水に浸かることで、ほどよくクールダウンで、体や頭の疲れがしっかり取れてスッキリすると思います。 

だからオフィス内のサウナに入ることで設計、エンジニア、バックオフィスの部署など、普段はあまり接点がない人たちが同じ空間で過ごし、コミュニケーションが取れる。また、頭がスッキリするので、いいアイデアが思い浮かび、新しい技術に結びつく。サウナはそういったさまざまな可能性が広がる場所になると考えています。 

心地よく会話ができる本格的なフィンランド式サウナを採用 

サウナ内も木や石など自然の素材が多く使われ、リラックスできる空間に仕上がっている 

―実際に社員のみなさんのサウナ利用率は高いのでしょうか? 

現在は稼働率が約50%で、この数字をもっと上げていきたいと思っています。現在は毎週水曜日を「水サ」と設定し、サウナ利用を呼び掛けています。同様に、第2・第4木曜日を女性従業員向けに「木サ」と設定しています。社内のチャットでは、このサウナのチャットルームが、一番規模が大きく、盛り上がっているし、これからもっと、上手くサウナを活用していってもらえたら。 

オフィスそのものが社員のモチベーションを上げる要因に

緑豊かな花壇や開放的なテラスが設置された8Fのラウンジ 

―社員のみなさんに尽くしていると言っても過言ではないほど整った環境ですが、実際に社員のみなさんはこのオフィスをどう感じていらっしゃるのでしょうか? 

木を基調としたオフィスということもあるのか、エンジニアたちからは、そもそもストレスがかなり減った、忙しくても感情をコントロールしやすくなった、などの感想が上がっていますね。 

若い女性社員からは「会社に来ると気持ちが上がります」と言ってもらったことがあり、とても嬉しかったですね。確かに僕も、家にいるよりここにいるほうが快適かもって思うことありますし(笑) 

管理部門の社員からは、「サウナが設置されたことで社員の健康意識が向上しているようだ」という報告も上がっています。 

総じて、オフィスが働く人に与える影響力の大きさを感じていますね。だから日本の企業にも弊社のようなビルや環境がもっと増えていくといいな、と思っています。まずはみなさんオフィスにサウナを設置してみてはどうでしょう? 

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