サッポロ不動産開発は、サッポログループの不動産事業を担う会社。「恵比寿ガーデンプレイス」「サッポロファクトリー」「GINZA PLACE(銀座プレイス)」など、グループゆかりの地で、大規模再開発による複合施設を管理運営しています。2021年11月に本社オフィスを移転しましたが、それに先立つ2017年から、最適な働き方を模索する改革を推進。新オフィスへの移転はコロナ禍のさなかでしたが、そのことが新しい働き方を後押しすることにもなりました。その経緯と現状について人事総務部の塚本桂也部長、齋藤寛子リーダーにうかがいました。
当たり前のように最適な働き方を選べるようになった
ー フリーアドレス化やテレワークの導入など、ワークプレイスとともに働き方が大きく変わった、とお聞きしました。
齋藤 私たちは不動産業で、オフィスも提供している側であるということから、あらためて私たちがモデルケースになるような働き方であったり、新しいオフィスづくりを試行していかなければいけない。そんな考え方を基に、オフィスリニューアル・プロジェクトが立ち上がったという経緯があります。
オフィス移転によって、それぞれが働きやすい形を選択できるようになったと言えると思います。現在は、当たり前のように最適な働き方を選べるようになった、というフェーズです。
今はコアタイムを廃止したスーパーフレックス制度を導入しており、フレキシブルタイムは5時から22時となっています。その間であれば1時間勤務の日があっても、他の日に多く働いて調整ができます。例えば、朝は5時から7時まで働いて、その後お子さんを保育園や学校に送り出してからまた働くことができるので、子育て世代には使い勝手の良い制度ではないかと思います。時間単位で使える有給休暇も好評ですね。
ー 社員の方々はその環境になじみ、働きやすさを感じているということですね?
齋藤 そう思います。ただ新入社員などには、カルチャーショックもあるようです。テレワーク中心で、「誰がいるのかわからない」というような声もあります。確かになじむのに時間がかかるということもあるでしょう。そこで、リアルコミュニケーションを補完する取り組みを始めています。一例を挙げると、自己紹介シートを作って発信しています。デジタルの仕組みは前々からありますが、あえて、キャラクターが出るようなものを別に作りました。「あなたがよく似ていると言われるのはなんですか」「これまでにやってきた職歴は?」「好きなもの・嫌いなものは?」などというカジュアルな問いに、フリーに答えてもらったり。発信方法もみんながわざわざサイトにアクセスして見にいくのではなく、メールベースで送っています。

「契約書類は絶対に紙じゃなきゃ」と思っていたが、実はそうでもない
ー 働き方改革を進め、オフィス移転を検討する中で新型コロナ感染症が広まったのですね。
齋藤 「強制力」という意味では、コロナの影響は大きかった気がします。2017年からテレワーク制度は導入ましたが、それが私たちの考える最適な働き方のオプションであるとしても、なかなかかつての習慣を変えることはできません。毎日、職場で顔を合わせて、電話で話をする、という同僚と突然すべてオンラインで仕事をするという状況にはなりませんでした。正直に言えば、コロナまでは本腰が入らなかったかもしれません。ただ、コロナによって、完全に「家から出てはいけません」となった瞬間、それでも日々の業務は回さなければならない、というとき、本当にカルチャーショックになるようなポイントがすごくあったので、いち早くそれに適応しなければならなくなりました。
塚本 この会社に限定して言うなら、人数が少ない(2023年12月末現在の従業員数は129名)ということがあるので、グリップは効きやすかったかもしれません。「新しいツールに慣れない」みたいなところもサポートはできますし、使ってみると「案外便利だな」とみんな気づきます。当然のごとく来なければいけなかった会社というものも、出社せずともWebやスマホでなんとかなる。紙の書類についても、不動産会社ですから契約書類は絶対に紙じゃなきゃ、というところもありましたが、実はそうでもないな、と気づけたところもあります。
「強制力」ということで言えば、新しい本社オフィスはガーデンプレイスタワーの一番端っこの狭いエリアで社員全員は入れない。それも一つの「強制力」でした。「全員が入れないところでどうするの?」といったときに、さっきの文書の電子化とか、シェアオフィスの話とかが出てきて、やってみると意外といい、という話にもなっていきました。
齋藤 例えば各種の社員研修なども、ほとんどがオンラインで実施されるようになりました。自宅勤務やシェアオフィスの活用も進みましたし、当初考えていた「最も生産性の高い場所を自律的に選んで働くこと」が、理想に近い形で実現していると思います。従業員意識調査でも、エンゲージメントスコアは2022年当時からずっと上がっている状況です。

ー 新しい働き方を支える制度面はいかがでしょうか?
塚本 この会社は当社の原籍者の他、サッポロビールから出向してきているメンバーも在籍していて、以前は原籍の違いによって同じ仕事をしていても処遇が違ったりしていました。それを是正すべく2021年に処遇をほぼ合わせたんです。グループとしては画期的なことだったのですが、それによって、社内の空気が変わったと思います。「やりがい」に焦点を当てるなら、このことは非常に大きいでしょうね。
そのことと関連して、仕事への向き合い方が変わったということもあると思います。食品事業は景気変動などに伴う浮き沈みがありますが、グループの中でも、不動産業は安定的に利益が取れるビジネスです。ですから、いわゆる「大家さん業」で、余計なことはしない、「言われたことをやればいい」となりがちだったかもしれません。ところがオフィスのリニューアルや働き方改革を通じて、働く場所もこういう自由な環境になった。そこで、かつてのような考えだとどうなるかというと、ただ「出社しなくなる」だけかもしれない。
でも、仕事って人生の中で占める時間が大きいわけだから、やりがいがある時間であってほしいので、内面的なものを変えて、かつ、この自由な環境をどう使うかということを考えてほしい、ということがあります。それが2020年以来継続しているビジョンプロジェクトによる従業員の意識改革の要諦ですが、そこにさらにアプローチするために今年から「7つの習慣」の研修を実施して「心に訴える」ということもしています。新しい働き方に伴うコミュニケーションの補完施策で横との繋がりとともに心理的安全性を確保しつつ、ビジョン浸透に取り組んできた数年間だったのかな、と思います。
齋藤 仕組み面では、ビジョンの浸透などはこれからも続きますが、経営ビジョンをもとにつくられた5つの行動指針「5ways」の定着から実践へと進め、この間に見えてきた課題を解消し、さらには新しい人も増えてきたので、最初のイズムみたいなことが薄れていないか、見ていかなければいけないかなと考えています。



