保有する豊富な遊休地を再開発することを事業の柱とする日本郵政不動産。旧中央郵便局をはじめ、都市部の一等地に多くの土地資産を持つだけに、デベロッパーの新興勢力として注目されています。2024年3月にはJR大阪駅と直結する「JPタワー大阪」が竣工し、周辺に新たな賑わいを生み出しています。コロナ後の新しい働き方を背景として、不動産事業はどう展開されていくのか。上席執行役員の本間徹さんにうかがいました。
自社保有地を再開発することで収益不動産にしていく
― 日本郵政不動産は2018年に設立された新興の会社です。その経緯を教えてください。
本間 郵政がなぜ不動産事業に参入したかというと、小泉内閣が1990年代末から2000年代にかけて行った郵政三事業(郵便・簡易保険・郵便貯金)を民営化したことに端を発します。民営化によって、新たな収益事業が可能になりました。持株会社となった日本郵政は2015年11月に上場もしました。つまり、収益拡大をしなければならない立場となり、新規事業の柱として不動産事業に取り組むようになりました。この間、ノウハウを蓄積ししながら一定の収益化を実現し、2018年に日本郵政不動産が設立され、ここに事業を集約したかたちです。
― 事業の特徴はどんなところにありますか?
本間 郵便事業の長い歴史の中で、数多くの土地資産を保有することになりました。場所はいいところにあるけれど、活用できていない資産がたくさんあります。例えば、かつて郵便は鉄道での配送をメインにしていましたから、JRの主要駅に直結する形で中央郵便局を置いていました。ただ、その後、高速交通網が整備され、自動車輸送のウェイトが高まりました。それに伴い、駅前で郵便事業をする必然性は薄れ、利用価値を考えると「もったいない状態」になっていました。そのような好立地の自社保有不動産を再開発することで収益不動産にしていくことが、初期のミッションでした。
賑わいと「つながり」を生み出す再開発による街づくり

― 2024年3月には複合ビルの「JPタワー大阪」を開業されましたね。
本間 これは、大阪中央郵便局旧局舎の跡地を含むエリアを再開発したもので、JR西日本、JTBと三社による共同事業です。一緒にやった方が全体の街区が使えますし、都心部での商業ビルとして競争力が上がるという考えで、お声がけをしました。高さ188メートル、地上39階・地下3階建てという規模になったのは、共同事業だからこそです。
JPタワーは東京駅にある東京中央郵便局の再開発で2012年に竣工したのが第1号案件で、次いで2015年に名古屋中央郵便局名古屋駅前分室跡地にJPタワー名古屋が開業しました。ですから大阪は第3号案件ということになります。オフィスとホテル、大ホール、そして東京、名古屋と同様に商業施設のKITTEが入っています。
― コロナ後の開業ですが、影響などはありましたか?
本間 計画段階でコロナ禍があり、企業ではリモートワークが広がりましたが、立地がいいですからオフィス部分も影響はないと思います。また、リモートワークを経験してみて、「やっぱりそれだけじゃダメだよね」という気づきもあったのではないかと思います。私たちとしても、オフィスはたんに執務するだけの場所ではなく、人が集まってコミュニケーションを図る場所でもある、という考えから、共用のラウンジなど、打ち合わせなどさまざまなコミュニケーションができる仕掛けを用意しています。
一方では、オフィスの立地や機能などは、新入社員をはじめとする採用計画にとって非常に大事、という風潮が強くなっています。なにしろ人手不足で、人が採れない。採用のため、あるいは社員を引き止めるためにも、オフィスが一つのカギになる。今は多くの会社が、オフィススペースを社員にとってアピールするための要素と考え、人事戦略の一環にもなっているようです。
― 開発の基本的な考え方はどのようなものでしたか。
本間 民営化するときに、いろいろな候補地がある中で、最も期待の高い場所でした。もともとの事業コンセプトは「つながりの始まり」というもので、中央郵便局以来の歴史のつながり、世界とのつながり、いろいろなものと出会う場所、とすることを考えていました。もちろん民間の会社ですから収益の最大化を目指すのですが、この場所のポテンシャルを最大化するには、より規模の大きなものを建てる必要がある、ということから共同事業になりました。
テナントとしてホテルと劇場を入れたのも周辺地域に賑わいを作り出すためで、「大阪駅前を文化拠点にしたい」という大阪市の意向もありました。ビルの魅力を高めるために多機能にしたことで、さまざまな調整が必要でした。盛りだくさんに詰め込みすぎたかもしれませんが、狙い通りの賑わいが生まれたと思います。テナント企業の社員の皆さまはもちろん、一般の多く方にも賑わいを感じていただけたら嬉しいですね。


