“人が集まる職場”の秘密──オフィス活気度指標でエネルギーを測る

最近のあなたのオフィス、どんな雰囲気でしょうか?活気にあふれていますか?それとも、なんだかシーンとしていて足音が響くような状態でしょうか?

リモートワークが選べる時代において、オフィスは 「ただの作業場」 から「人と組織をつなぐエネルギーの発信地」へと、その存在意義がシフトしています。

前回のコラムでは「活動ベースの働き方(Activity-Based Working)」から「関係性ベースの働き方(Relationship-Based Work)」への進化をご紹介しました。つまり「どこで働くか」だけでなく「誰と、どんな関係性で働くか」が、これからの働き方において重要な意味を持つようになってきているのです。それにともないオフィスもまた、人と人のつながりを支える空間へとアップデートが求められています。

Office Vibrancy Metricsとは?

こうした流れの中で、いま注目されているのが「Office Vibrancy Metrics(オフィス活気度指標)」です。これは、オフィスが生み出す「目に見えない価値」ーーたとえば居心地のよさや偶然の出会いから生まれる協働の質ーーを可視化しようという考え方です。

WORKTECH Academyのレポート『The World of Work in 2025』でも、この指標はハイブリッドワーク時代における新しいオフィス評価のトレンドとして紹介されています【1】。

「使用率」や「占有率」といった量的な測定だけでなく、「その空間がどれだけエネルギーを生んでいるか」という質的な視点から、オフィスを捉える必要があるのです。

これによって、なぜオフィスに来るのか、オフィスでしか得られない価値は何か。その問いに対する答えを、より具体的に把握できるようになります。

オフィスの「見えない価値」を可視化する

「この広いオフィス、本当に必要?」「家でも同じじゃない?」といった声を耳にすることが増えました。確かに、家賃や光熱費、設備投資など、オフィス維持には大きなコストがかかります。

ですが、私たちが多くの企業と実際に関わってきた中で感じているのは、「オフィスはコストではなく、戦略資産である」という視点の大切さです。

たとえば雑談から生まれるアイデア、先輩の仕事ぶりに学ぶ機会、空間を共有することで生まれる信頼の醸成…。これらは数字には表れにくいものの、組織の健全性や成果に深く関わっています。

お気に入りのカフェを思い浮かべてみてください。その魅力には、居心地のよさや適度な賑わいやデザインの力が組み合わさっているのではないでしょうか。オフィスも、それと同じです。

では、その活気はどこにどう現れるのかについて、具体的な3つの視点から探っていきましょう。

活気の「現れ方」は3つのシーンで見えてくる

1. 「人の活気」

オフィスが生み出す価値の一つは、人が前向きに働けること。 エンゲージメントやウェルビーイングといった指標もありますが、もっとシンプルに言えば「このオフィス、なんだか気持ちよく働けるな」と感じられるかどうかです。こうした「人の活気」を測る手がかりとして、こんな問いかけがあります。

たとえば「リモートと比べて、オフィスにいる日の気分はどうですか?」と聞いてみる。

「ちょっと元気になれる、気持ちが切り替わる」といった声が多ければ、それはオフィスならではの価値かもしれません。また、特定の曜日に人が集まりやすいとしたら、そこにはオフィスに来たくなる理由があるのかも。こうした人の活気を捉えることで、エンゲージメント向上や出社の動機づけにつながるヒントが見えてきます。

2. 「協働の活気」

Microsoftのレポートによると、ハイブリッド勤務者の多くが、同僚とのつながりの希薄さや仕事の目的意識の低下を課題に感じているそうです【2】。これはオフィスで「人とのつながりを感じる瞬間」が、個人だけでなくチーム全体の活力にも大きく影響していることを示しています。

オフィスが持つ最大の価値のひとつは、協働の場であること。一人で完結できる仕事であれば在宅勤務でも支障はありませんが、アイデアを出し合ったり、複雑な課題に一緒に向き合ったりするには、同じ空間を共有することが何よりの強みになります。

ランチの時間やちょっとした立ち話のなかに、新しいプロジェクトのヒントが隠れているかもしれません。そうした交流が生まれるきっかけの場として、オフィスはまだまだ進化できる余地があります。

3. 「空間の活気」

オフィスは単なる箱ではなく、そこにいる人々の気分や行動、創造性にまで影響を与える「場としての力」を持っています。適度な賑わいや心地よい空間のバランスが取れたとき、人は自然とパフォーマンスを発揮しやすくなります。

たとえば、今日のオフィスが居心地がよかったと感じた日。そこには、人数や音の大きさ、動きの多さといった環境の細かな要素が影響しています。このように、主観的な印象と環境データという客観的な情報を重ね合わせることで、空間の活気は立体的に見えてきます。

CBREも「オフィス戦略はリテール戦略から学べる」と提言しています【3】。光の入り方やレイアウト、賑わいの演出といった空間デザインが、無意識のうちに「また来たくなる理由」を作り出しているのです。

明日から始めるオフィス活気度アップの第一歩

すぐに取り入れられる、オフィスの活気を高めるアイデアをいくつかご紹介しましょう。

集まる時間と場所を作る

人が自然に顔を合わせる仕掛けを作ってみましょう。

たとえば美味しいコーヒーのあるカフェスペースや、ふかふかのソファが並ぶラウンジ。そんな「つい立ち寄りたくなる場所」が、偶発的な会話やつながりを生み出します。「水曜の午前はみんなで出社する日」といった小さなルールを設けるのもおすすめ。習慣化された集まる時間が、オフィスの空気を自然と循環させます。

オフィスの「エネルギーマップ」を描いてみる

1週間ほど、毎日同じ時間にオフィスを見渡してみましょう。人がどこに集まり、どの時間帯に活気が生まれているのかが見えてきます。活気のある場所には、プロジェクトの進捗ボードやチームの成果物などを置くことで、ポジティブな空気が自然と広がります。

逆に、静かなエリアは改善のチャンスです。観葉植物を置いて緑を取り入れたり、照明を柔らかくするといった工夫で、心地よい空間を作り出せます。

③ 「一つだけ変えるなら何?」を尋ねる

チームメンバーに「オフィスの活気を高めるために、一つだけ変えられるとしたら何?」と問いかけてみましょう。大がかりな改装や費用のかかる変更は難しくても、意外とすぐに実現できるアイデアが返ってくることがあります。日々の小さな声に耳を傾けることで、オフィスの雰囲気を変えるためのヒントが見えてきます。

目指すのは、「人が集まりたくなるオフィス」

オフィスは単なるコストではありません。適切に活用すれば、人と組織を育てるエンジンとなり得ます。そのカギを握るのが、「オフィス活気度」という新たな視点です。

WORKTECHレポートが示すように、ハイブリッドワークが定着した今、問われているのは「どこで働くか」ではなく「誰と、どんな関係性で働くか」。この関係性の質が、オフィスの価値を大きく左右しています。

人が生き生きと働き、新しいアイデアが次々と生まれ、前向きなエネルギーが感じられる場所――そんなオフィスこそが、組織のパフォーマンスを底上げするのです。そして最も大切なのは、オフィスに行く意味を、誰もがしっかりと実感できること。その実感があれば、もう出社を強いる必要はありません。

あなたのオフィスも必ず「行きたくなる場所」へと進化できます。その第一歩を今日から踏み出してみませんか?

参照:【1】WORKTECH Academy、”The World of Work in 2025: top trends for the year ahead”.WORKTECH Academy.https://www.worktechacademy.com/the-world-of-work-in-2025-top-trends-for-the-year-ahead/
【2】Microsoft.”Microsoft Community Hub”.Microsoft Community Hub.2022.04.20.techcommunity.microsoft.com
【3】CBRE.”Global Commercial Real Estate Services | CBRE”.2024.01.18.Office Workplace Strategy: Taking a Lesson from Retail​

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