「会議室が取れない」──そう言われたら、確かめたいこと
「会議室が足りないんですけど、増やせませんか?」
総務やオフィスファシリティ管理を担当していると、こうした相談を社内から受ける場面も多いのではないでしょうか。現場からの切実な声。会議を入れたいのに空きがない。予約画面を見ても、どの部屋も終日埋まっている。
実際、ザイマックス不動産総合研究所が2025年秋に実施した調査でも、メインオフィスに関する課題の第1位は「会議室やリモート会議用スペースなどが不足している」(57.7%)であり、他の項目を大きく引き離しています。不足が顕著なのは「1人用のリモート会議用ブース・個室」(47.5%)と「2〜4人用」(46.9%)で、日常的に使われる小〜中規模の会議スペースに不足感が集中しています【1】。
しかし、ここで立ち止まって考えたいのは、──本当に「数」が足りないのか、という問題です。
増設・移転を検討するにも、レイアウト変更を上申するにも、感覚ではなくデータが必要です。そして、データを見てみると、「足りない」とは少し違う景色が見えてきます。

データが明かす「3つの不都合な真実」
Acallは、会議チェックインの仕組みを通じて、様々な企業の会議室利用の実績データを蓄積し、分析してきました。その結果見えてきたのは、「会議室が足りない」と結論づける前に「使い方の構造的な課題」に取り組む方が効率的である、ということでした。
様々な企業のデータを横断的に捉え、具体的に見えてきた3つの数字をご紹介します。
キャンセル率 34%
予約の3件に1件が、手動もしくは自動でキャンセルされていました。「念のため確保しておこう」「日程が決まらないからとりあえず押さえておこう」──こうした仮押さえが、いつまでも解放されないことで、他の人の利用機会を静かに奪っています。
利用実績率 46.8%
上記でお伝えしたとおり、予約件数の34%がキャンセルされ、実際に利用されている予約件数は残りの66%となります。しかし利用実績時間で見てみると、46.8%という値に。
これは実利用された会議予約でも、予約した枠をフルに使い切っていないケースが多くあることを示しています。1時間で予約して45分で終わる。残り15分は「予約済み」のまま誰にも使われない。この積み重ねが、見えない空き時間を生んでいます。
延長発生時は平均40分超過
予約枠いっぱいを使い切らない予定もあれば、一方で予定通りに終わらない会議も存在します。延長が発生した場合、平均で40分もの超過が起きていました。これは後続の予約を玉突きで圧迫し、「次の会議が始められない」という状況を引き起こします。
一般的に、会議室の適正稼働率は65〜70%とされています。75%を超えると「予約が取りにくい」と感じる人が増え、逆に40%を下回るとスペースが有効活用されていない可能性が高いとされています【2】。
件数でみると、利用実績率66%は適正範囲内に見えるかもしれません。しかし、件数ではなく実績時間で見てみると、利用実績は全体の半分にも満たないのです。延長による玉突きも加わると、実際には「予約画面は満室なのに、空いている部屋がある」という現象が起きています。これが、「足りない」という声の正体です。
あなたの会社の会議室利用を「予約率」と「利用実績率」、「件数」と「時間」、どちらかだけで判断しているのであれば、利用データの把握方法を見直してみてもいいのかもしれません。
空予約は一枚岩ではない──会議室タイプ別に異なる構造
「空予約が多いなら、キャンセルを徹底すればいい」
そう考えるのは自然なことかもしれません。しかし、運用を徹底することは大変です。また、会議室のタイプによって、キャンセルが発生する仕組みが異なることを考慮することで、効果的な対策をとることができます。
実際のデータを元に見えてきた、会議室タイプ毎の「なぜ空予約が生まれるのか」のメカニズムを3つパターンに分けてご紹介します。
小・中会議室(4〜12名用) は、予約が殺到する人気ゾーンです。予約画面上は常に埋まっていますが、キャンセルされた枠が速やかに別の会議に再利用されており、回転率は比較的高いと言えます。会議室に置かれた端末でチェックインをする運用により「使われていない会議室の自動解放」→「再利用」のサイクルが効いている領域です。ここでの課題は空予約と再利用そのものよりも、特定の部屋への予約集中の分散にあります。
来客応接室 は、一見するとうまく運用が回っているように見えるものの、実際に使われている時間は非常に少ないタイプです。来客対応のために「念のため確保」された応接室は、来客がキャンセルになっても予約が残ったまま放置されやすい傾向があります。そして応接室という性質上、社内会議への転用もされにくく、「空いているのに使われない」という構造的なもったいなさが生じます。
セミナールーム(大会議室) は、空いた枠の再利用率が極端に低いタイプです。例えば、70名収容の大部屋は、空いたとしても「ちょっとした打ち合わせに使おう」とはなりません。大人数用途のスペースは、空いても再利用されにくいという構造的な課題を抱えています。
会議室タイプごとに「なぜ空くのか」の理由が違う以上、「キャンセルを徹底しましょう」という画一的な呼びかけだけでは根本的な改善には至りません。まず自社の会議室がどのパターンに当てはまるかを把握することが改善の第一歩となります。

「増やす」前に「使い方を変える」──チェックイン運用の効果
では、具体的にどうすれば改善できるのでしょうか。
ひとつの有効なアプローチが、会議室の「チェックイン運用」です。会議の予約者が実際に入室したタイミングでチェックインし、会議が終われば(あるいは予定より早く終われば)チェックアウトする。一定時間チェックインがなければ予約は自動でキャンセルされ、会議室が解放される。このシンプルな仕組みが、空予約問題に大きな効果をもたらします。
実際のデータでは、自動キャンセルと早期チェックアウトによって数千時間規模の会議室時間が新たに創出され、その過半数が別の会議によって再利用されていました。この「創出された時間のうち、どれだけが実際に再利用されたか」を示す指標が再利用率です。再利用率が高い会議室ほど、チェックイン運用の効果がしっかり回っていると言えます。増設も移転もせず、「使い方を変える」だけで、実質的な会議室の供給力を拡大できた事例です。
曜日や時間帯の分散も有効な打ち手です。多くの企業では特定の曜日・時間帯に会議が集中する一方、週の前半や昼休み前後には大きな空きが生まれています。この偏りを社内に可視化するだけでも、「別の曜日・時間に回せる会議」の分散が進む可能性があります。
こうした「使い方を変える」アプローチの効果は、Acallの事例に限った話ではありません。組織分析プラットフォームのWorklytics(米)が2025年に発表した北米テック企業のベンチマーク調査によると、企業規模を問わず、会議室の予約と実際の利用の間には20〜30%のギャップが存在し、利用効率は約42%前後にとどまっています。また、同調査では「一定時間チェックインがない予約の自動解放」が有効な施策として推奨されており、Acallのチェックイン運用と同様のアプローチがグローバルでもベストプラクティスとされています【3】。
テクノロジーによる仕組み化、運用ルールの見直し、そしてデータの可視化。この三位一体で、会議室の課題は大きく前進します。
まず「知る」ことから始める──データで会議室の実態を確かめる
多くの企業が、会議室の管理にカレンダーの予約状況を使っています。しかし、それは「予約の実態」であって「利用の実態」ではありません。
「利用実績率」「キャンセル率」「再利用率」──この3つの指標を把握するだけで、見える景色は大きく変わります。予約画面が示す「満室」の裏側に、どれだけの余白が隠れているか。それを知ることが、増設・移転を判断するための最も確かな出発点です。
会議室問題を「感覚」から「データ」に変える。その第一歩を、踏み出してみませんか?
📌 もっと詳しく知りたい方へ イベントのご案内
2026年4月24日(木)、Acall六本木オフィス「AI Meeting Lab Roppongi」にて、本記事のテーマを深掘りするイベントを開催します。実際の分析データを使った解説に加え、会議室チェックイン・AI Meetingを実機で体験いただけます。

イベント詳細・お申し込みはこちら https://www.workstyleos.com/event/baxbs75f8077
特典:無料 会議分析診断トライアル
自社の会議室利用データで実態を確かめたい方には、イベント参加特典としてAcallの会議分析診断を無料でご提供します。1ヶ月のトライアルから、稼働率・キャンセル率・利用実績率などを分析します。
参考文献
【1】ザイマックス不動産総合研究所「大都市圏オフィス需要調査2025秋」2026年1月 https://soken.xymax.co.jp/report/2601-office_demand_survey_2025a.html
【2】三菱地所リアルエステートサービス「会議室の面積はどのように決める?適正数とは?検証のポイントを解説!」
https://office.mecyes.co.jp/column/detail/221
【3】Worklytics「2025 Benchmarks: What “Good” Meeting-Room Utilization Looks Like for Tech Firms」 https://www.worklytics.co/resources/2025-meeting-room-utilization-benchmarks-tech-firms
那須 瑶香
Acall株式会社 プロダクト企画グループ 副ゼネラルマネージャー
2019年にAcall入社。マーケティング、海外展開、新規サービス企画など幅広い業務を経て、現在はプロダクト企画グループの副GMとしてAcallのデータ分析領域を牽引。複数企業の会議室利用データ分析を手がけ、データに基づく改善提言と伴走支援に取り組んでいる。


